大阪の国立文楽劇場に文楽を観に行ってまいりました。一部二部どちらも観ましたが、一番の目的は『伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)』でした。昨年の12月、東京の国立小劇場で上演されましたが、私はチケットを買っていたにもかかわらず体調不良で行けなかったのです。そして、新年に予定されていたライブも出演できませんでした。息災を祈念するため、また、聴いてくださる皆様、曲を作り上げてくださる方に私事でご迷惑をかけない願掛けに、この作品が上演されたら必ず観ようと決めておりました。
さて、この物語、主人公は八百屋お七さんです。お七といえば、恋人に会いたいあまりに放火を企て火刑になったことで有名です。文楽の物語では、家のために気の進まぬ縁談を受け入れなければならないお七が、主人とともに今宵限りで切腹を命ぜられている恋人吉三郎を助けようとある計画を立てます。成功させるには夜には閉まる江戸の町々の木戸を開けなくてはなりません。火事と思わせて木戸を開けるため火の見櫓の半鐘を打ちます。見つかれば火あぶりの刑です。
雪降るなか、人形が火の見櫓を人形遣いなしで(と見えつつ)上っていく(櫓上がり)演出が見どころです。
何年か前に「歴史占い」なるものが流行りませんでしたか?おもしろ半分でやってみた結果は、非凡なる才能の織田信長でもなく、なぜか魅力的な光源氏でもなく、楚々たる女性の鑑巴御前でもなく、破天荒な八百屋お七でした。お七さんの一途な恋心が私のどこかに潜んでいるなら、歌で表現できたらいいなと思います。そしてもうひとつ、彼女が処刑された鈴ヶ森は自宅からそう遠くもないところです。火あぶりになったときは数えの16歳でした。
錦秋文楽公演 2010年11月21日まで国立文楽劇場にて
第一部
嬢景清八嶋日記 (むすめかげきよやしまにっき)
近頃河原の達引 (ちかごろかわらのたてひき)
第二部
一谷嫰軍記 (いちのたにふたばぐんき)
伊達娘恋緋鹿子 (だてむすめこいのひがのこ)